これら建物のなかには、内部を博物館にして、当時の街の様子などを伝えているところもあるが、外観のほうがはるかに見ごたえがある。

 韓国には数こそ多くないが、日本時代の建物が残っている街がある。以前に紹介した九龍浦もそのひとつ。追って紹介する群山にも日本家屋が残されている。しかしそれらはすべて木造家屋だ。しかし仁川は違う。旧日本人街を構成しているほとんどの建物が石づくりだ。そんな建物が、これほどの密度で残っているところは仁川しかない。

 木造の日本家屋からは、朝鮮に渡った日本人たちの暮らしが伝わってくるが、仁川の旧日本人街には、植民地経営を進めた日本の政治や経済といったものに裏打ちされた威信が漂っている。日本は植民地支配を固めていくために、歴史的な建造物をつくりあげていった。それはときに負の遺産のようにとらえる見方もある。日本といまの韓国の間にはその軋轢は横たわっている。

 その意味では、仁川の日本人街は生々しい。仁川以外の旧日本人街とは異質なのだ。

 このあたりが仁川……。正確に区画整理された道に沿って並ぶ旧日本系の建物の間を歩きながらそんな思いが湧いてくる。

 仁川の街を歩いていると、さまざまな思いが浮かびあがってくる。そのすべてが歴史に裏打ちされている。街歩きは手ごたえがある。

日本人街だが日本風の飲食店は少ない。この店は店頭に日本の酒を並べていたが、料理は韓国