知人のKさんはこう話してくれた。

「韓国には国産ウイスキーの有名ブランドがないんです。ほとんどが輸入ウイスキーです。欧米のウイスキーも出まわっていますが、味が濃くて、ハイボールには向かない気がします。そこへいくとサントリーウイスキーの角瓶はいい。味が優しんです。レモン果汁とよく合います」

 しかし日本も在宅勤務が多くなり、家飲み需要が増えていた。角瓶は日本でも品薄傾向だったようで、なかなか韓国までは届かない。そこで起きた争奪戦だった。あるスーパーでは一時、700ミリリットルの角瓶が1本3万9800ウォン(約4100円。当時)の値段をつけていた。

 その時期に韓国の大統領が代わった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が大統領になり、風向きは一気に変わった。対日関係では、「No Japan」の空気は唐突に消え、関係が修復されていく。そのなかで新型コロナウイルスの感染は収束していった。

 韓国の人たちは一気に海外旅行に出るようになる。いちばん人気は日本だった。近いから飛行機代も安い。円安がつづくなか、日本の物価の割安感が後押しした。そして空前の日本旅行ブームへとつながっていくのだ。

 コロナ禍明けに日本を訪ねた韓国人は、5人にひとりという計算にもなるという。延べ人数のカウントだが、相当数の韓国人が日本を訪ねた。そして日本での飲み物……居酒屋のハイボールということになる。

 韓国に戻っても、日本で知ったハイボールになびく。ソジュにビールという組み合わせより新鮮で飲みやすい。反日的な政策は消えたから、飲食店もハイボールを堂々とメニューに掲げるようになる。

 そしてソウル版、ハイボール競争がおきてくる。さまざまな工夫を凝らしたソウルハイボール。いまやハイボールは韓国の色を強め、独自の世界に進もうとしている。