ベーカリー系の店ができる前、僕はしばしばトーストを朝食にしていた。韓国のトーストは、一般にいわれるトーストと違った。だいたい道端にキッチンカーもどきが停まっていて、そこで売っていた。

 バターを敷いた鉄板で焼いたトーストにハム、卵焼き、スライスチーズ、キャベツなどが挟まったホットサンドだった。これを韓国ではトーストと呼んでいたのだ。

 ホテルに持ち帰ったり、公園のベンチで食べることが多かったが、とにかく、味は濃厚だった。チーズとバターの味がかなり効いていた記憶がある。

 塩パンの濃厚さは、昔のトーストに通じるものがある?

 そう思うと、急にかつてのトーストが食べたくなった。しかし最近、トーストを売るキッチンカーを見かけなくなった。時代とともに消えてしまったのだろうか。

 ネットで調べると、明洞にキッチンカーではない路面店があった。『ISAAC』という店だった。

 先月の昼前、この店を訪ねてみた。

「これこれ」

 そこには懐かしいメニューがあった。 (つづく)

トーストの店『ISAAC』は、明洞のトェゲロ(退渓路)に面していた