大型連休を前に、韓国旅行の計画を立てている人も多いだろう。話題のスポット巡りや韓国グルメ食べ歩き、K-POPコンサートやミュージカル鑑賞、韓国ドラマロケ地巡りなど、目的があるとさらに旅の日程は忙しくなる。そんな慌ただしい韓国滞在、ソウルでの朝食について紹介しよう。

■韓国滞在中、朝食に人気の塩パンを食べて思い出した、懐かしい韓国風トーストの味とは?

 旅先の朝食──。パンになることが多い。日本でも朝はパン。それが習慣になっているのか、僕の胃には、ご飯やの朝食は少し重い気がする。

 ソウルでもだいたいパンである。最近はコンビニのイートインスペースで、甘めのパンにコーヒーというパターンが多いが、10年以上前はコンビニにいまほどの密度はなく、宿に近いベーカリーで朝食をとることが多かった。

 ソウル在住が20年を超える日本人が、以前、こんなことをいっていた。

「ソウルで暮らしはじめた頃、パンがまずくて不満でした。日本でいう甘めの菓子パンみたいなものしかなく、日本には普通にあったフランスパン系のパンとかもみつけるのが大変で。その後、ベーカリーが急激に増えて、だいぶよくなりましたが」

 僕が頻繁にソウルに行くようになった頃、ベーカリーはかなり増えていた。朝食はベーカーリーが多かった。日本と同じようにトングでパンをとってキャッシャーに向かい、そこでコーヒーも注文するスタイルだった。コーヒーは日本のそれよりかなり薄かったが、パンは日本のパンに近かった。

 当時のベーカリーで、記憶に刷り込まれているのが、キム・ヨナの等身大看板である。

 キム・ヨナは、多くの日本人の記憶に残っているフェギアスケートの選手である。女子シングルの部門で、2010年のバンクーバーオリンピックで金メダル。2014年のソチオリンピックでは銀メダル……。韓国では「国民の妹」と呼ばれ、大変な人気だった。ブームのなか、フィギュア界を舞台にした『トリプル』や、ショートトラック選手と元フィギュア選手の交流を描いた『Love on ICE』などのドラマもつくられた。『薄氷の告発』といったシリアスなものもある。

 人気があったキム・ヨナは、あるベーカリーチェーンのキャンペーンガールのような存在になっていた。その店には、キム・ヨナパンがあった。サツマイモクリーム入りと、ブルーベリークリームチーズ入りがあった。そして店の前には、彼女の等身大看板……。僕もよく、キム・ヨナパンを朝食にした。さっぱりとした甘さが、それまでの韓国のパンとは違っていた。

 その後、韓国のベーカーリーは進化していく。最近のカフェブームにのって、しっかりとした食事もできるカフェベーカリーといったスタイルになっている店も多い。

 先日、ガイドブック『歩くソウル』に掲載されていた『紫燕島ソグムパン&紫燕島家』に行ってみた。なんでも、ここの塩パンが列ができるほどの人気だという。地下鉄の鐘路3街駅の近くだった。

 この店はテイクアウト専門。4個で1万2000ウォン。日本円で1200円ほど。隣にあったベンチで知人を分けあって食べたが、そこそこの値段だ。

 しかしひと口かじると、その人気の理由がわかった。バターの濃厚な味が舌に広がり、塩分とのバランスもいい。思った以上に満足感があった。

塩パンが人気の『紫燕島ソグムパン&紫燕島家』。夕方訪ねたが、客は絶えなかった

「ソウルのパンはここまできているとは思わなかった」

「そうでしょ。もうベーカーリーのパンで納得している時代じゃないですよ」

 そういったのは、ソウル在住20年越えで、「昔の韓国のパンはひどかった」といった知人だった。

 この濃厚さ……。通じるものがあった。韓国のトーストである。