昔から思うのだが、韓国の薬局は独自の世界を築いているように思う。日本の薬局というと調剤薬局が多い。医師が書いてくれた処方箋を持参すると、その薬をそろえてくれる。だからどこの薬局でも大差はない。最近は調剤薬局コーナーはあるドラッグストアが増えているが、薬局というよりスーパーに近づいている気がする。

 しかし韓国には、こんな言葉があるという。

「あの薬局の薬は効く……」

 以前、ソウルで風邪を引き、発熱したときも、知人から同じことをいわれた。薬局で売る薬に差があるのだ。だから薬局は扱う薬を積極的に前面に出す。人気の薬局というものが存在するのだ。江南スクエア薬局が日本人に人気という話も、ソウルっ子の間では違和感がない。

 江南在住の日本人女性はこういう。

「韓国では体調を崩したとき、病院やクリニックではなく、薬局の薬で治すという感覚がありました。それがいまでも生きている気がします。江南スクエア薬局は日本語を話せるスタッフを集めて成功しましたね。日本人観光客が泊まるホテルが多いっていう江南事情も手伝って……」

 薬局に対する感覚が韓国と日本では違う。だからだろうか。薬局や薬剤師が登場する韓国ドラマは多い。やや古いドラマだが、『ソウル薬局の息子たち』は高い視聴率を稼いだ。恵化(ヘファ)にある薬局を舞台にしたホームドラマで、ソン・ヒョンジュチ・チャンウク、パク・ソニョンらが出演している。

 日本では薬局を舞台にしたドラマという発想が生まれにくい気がする。それだけ韓国の薬局は存在感があるということだろうか。

 韓国の薬局はそれぞれ特徴を生かし、ビジネスとして展開している。日本の調剤薬局とは違うのだ。江南の場合は、美容施術後にやってくる日本人にターゲットを絞ったということらしい。しかし江南在住の日本人がよく行く薬局は別の店だという。教えられた店は、江南スクエア薬局から歩いて2~3分のところにあった。(つづく)