韓国の人気バラード歌手ソン・シギョンと『孤独のグルメ』の松重豊が出演するNetflix日韓グルメ番組『隣の国のグルメイト』。シーズン3「出張グルメ対決」の第4話は、松重豊がお休みし、ソン・シギョンがNetflix英語部門歴代1位のドラマ『ウェンズデー』のプロモーションで来韓していた主演女優ジェナ・オルテガとエマ・マイヤーズをソウル豆腐料理専門店でもてなした。オルテガはヴィーガン(完全菜食主義者)なので、ぴったりのセレクトだったと言える。

韓国料理における豆腐の存在感

 日本からの旅行者にとって韓国の豆腐料理の印象は強いとは言えない。なじみがあるのは日本でもレトルト商品化されているスントゥブチゲ(汲み出し豆腐の辛いチゲ)、あるいは韓国居酒屋の定番メニューのトゥブキムチ(豆腐とキムチ)くらいだろう。

 江原道(江原特別自治道)の東海岸寄りの田舎町に行くと、豆腐料理専門店が目立ってくる。なかでも有名なのが江陵(カンヌン)の草堂スントゥブ。にがりの代わりに海水を使って大豆の甘味を生かした汲み出し豆腐だ。

 また、韓国の寺院に泊まって仏教体験するテンプルステイの食事にも豆腐料理はよく出てくる。

手前がセントゥブ。『隣の国のグルメイト』に登場したザル豆腐に近いもの
豆腐とキムチは相性抜群
江陵の草堂スントゥブ。ほのかな塩味が大豆の甘味を引き立てる

 韓国人にとって豆腐は日常的な食べ物だが、毎日のようにみそ汁の具にしたり、醤油とかつおぶしをかけて冷奴にしたり、中華の麻婆豆腐として食べたりする日本と比べると、食卓への登場頻度は高くない。

 ソウルに住んでいる筆者は、週末、家族や友人たちと郊外にドライブに出かけたとき、水のきれいな地域の豆腐料理専門店で食事したことを思い出す。タッペクスク(鶏の水炊き)やオリクイ(鴨肉焼き)などの鶏料理と並んで、都市生活者が緑豊かな郊外で食べたくなるのが豆腐料理である。

全州市郊外の豆腐料理専門店で食べたセントゥブ