暑い時期にソウルを訪ねるとコングクス(コンククス)をよく食べる。日本では豆乳麺などといわれる麺料理で、煮た大豆(コン)をミキサーで砕き、とろみのある冷たいスープに仕立て、そこに麺(ククス)を入れる。ソウルを訪ねる僕にとっては、日本の冷やし中華のような存在だ。
僕のコングクス好きはソウルの知人の間でも知られるようになり、夏の昼、食事でもということになると、「このへんにコングクスの店、あったかなぁ」などといわれることがある。
■冷たい麺料理、コングクスに惹かれる理由
なぜコングクスなのか。うつらうつらと考えてみると、豆乳が好きなのだと思う。アジアの旅の楽しみのひとつは、手軽に飲める豆乳である。台湾やタイでは、朝は必ずといっていいほど豆乳を注文する。
台湾には朝食専用の店があり、そこで鹹豆漿という豆乳に油條、つまり中国風の揚げパンを浸して食べる。タイには豆乳屋台が出る。温かい豆乳をビニール袋に入れてもらう。たいたい近くにはパートンコーというタイ風の揚げパン屋台がある。それを2個ほど買い、宿にもち帰って食べる朝食になることがいちばん多い。
そんな日々が僕の味覚に、豆乳酵素のようなものをつくりあげてしまったのだろうか。韓国でコングクスをはじめて口にしたとき、その酵素の鍵がぴたっとはまってしまったような感覚があった。
東南アジアでは、豆乳と揚げパンという組み合わせが多いが、韓国は豆乳に麺を合わせてしまった。はじめて食べたとき、その感覚に唸った。大豆からつくったスープは意外とサラッとしていて、微妙な塩味が効いている。それを麺に絡めて食べる。日本の冷やし中華よりはるかにレベルが高いと思った。
コングクス好きだが、こだわりの店があるわけではない。麺は店によって違う。小麦麺やうどんのような麺、そうめん風の細い麺を使う店もある。どの麺でも豆のスープに絡めて食べると、なんとも幸せな気分になった。やはり豆乳好きなのだと思う。
韓国ドラマにもコングスクはときどき登場する。『スタートアップ:夢の扉』のシーンを思い出す。このドラマはハイテク業界で起業する若者たちの青春ストーリーで、ペ・スジ、ナム・ジヒョン、キム・ソンホらが出演している。
その劇中でコングスクの素材や具をテイクアウトし、世話になった人に届けるシーンがあった。そこでコングスクを食べる満足げな表情……。僕は妙に共感してしまった。