日本食は世界レベルで人気が高い。寿司、ラーメン、天ぷらなどが人気のトップといわれるが、いちばん浸透しているのはトンカツではないか……と僕は密かに思っている。バンコクのあるラーメン店でこんな話を聞いた。
「バンコクでのラーメン店は競争が激しくて、なにかアイデアがないかって思っていたんです。スタッフのタイ人が、トンカツをつけると頼む人が増えるはずっていうんです。それでラーメンにトンカツを4切れほど載せた小皿をつけた。すると注文が倍増。タイ人は実は日本のトンカツが大好きなのかもしれません」
世界の街にはトンカツ専門店は少なくない。しかし高い。ラーメンに小皿で添えるとお得感が増すということか。ラーメンにトンカツの小皿……日本ではメニューに載りにくいだろうが。
■韓国式トンカツの特徴は?
世界にはトンカツに似た料理は少なくない。現地の人も日本のトンカツを比較的すんなり受け入れることができる。
日本とのかかわりが深い韓国と台湾では、当然、日常食として入り込んでいる。そしてさまざまなアレンジが加えられる。台湾に行くとよく見かかる排骨という文字。一般に排骨といったらトンカツである。さまざまな味があるが、甘辛系のたれをかけるのが主流だろうか。
韓国では「トンカス」と発音する。台湾の排骨に比べると日本のトンカツに近い気がするが、はじめて出合うと、「えッ」と短い声をあげる程度に違う。
韓国のトンカス、台湾の排骨……。どちらにも共通したことがある。庶民向けの大衆料理ということだ。安いのだ。排骨弁当は典型的な庶民弁当。トンカスは高速道路のドライブインには必ずある定番料理である。
今年の1月だったろうか。ソウルからLCCのティーウェイ航空で帰国したことがあった。午後2時頃のフライトで、チェックインを終えた仁川国際空港で昼食をとった。コロナ禍が明け、ソウルの物価は高くなった。ましてや空港である。どうしても安い料理を目で探してしまう。日本円で千円ぐらいですむ料理はないだろうか。いくつかの店をのぞき、トンカスに出合った。
久しぶりだった。韓国にいると、朝はパンとコーヒー、昼は冷麺かうどん、夜はビールと一緒に……というパターンが多く、がっつり系のトンカスはなかなか入り込んでこない。