■現実の職場の飲み会にも変化、酔うために飲む酒文化の衰退?

 ドラマや映画は世相を映すといわれるが、ここ数年は現実の職場でも会食を見直す傾向にある。会食は健在だが、二次会(たいていカラオケ)、三次会に行くことは少なくなり、上司が部下にアルコールを強制することはほとんどなくなった。

 これには、韓国企業のグローバル化で欧米式のビジネス習慣に移行しつつあること、個人主義が尊重され、滅私奉公が時代に合わなくなったことなどが影響しているだろう。コロナ禍で外食が忌避されるようになったことも後押しになった。

 もっとも、『Missナイト & Missデイ』のイム・スンの上司のように会食は自由参加と言っても、実際はNOとは言えない空気が、現実にもある。韓国語で言う「ヌンチ(空気を読むこと)」だ。資本主義の力学には個人主義も太刀打ちできないのだ。

 こうした変化は夜の会食に限らない。十数年前まで我が国ではランチは職場の部署の上長プラス部下数名で食べることが多かった。たいていは上司がおごるのだが、ときには部下がおごることもある。

 おごられてもおごっても経済的、精神的負担になるので、ランチは一人で食べる人が増えた。

 TWICEジョンヨンの実姉コン・スンヨンが個人主義を貫くOLを演じた映画『おひとりさま族』は、それを象徴する作品だ。

 職場の会食に限らず、我が国では一般の会食にも変化の波は押し寄せている。ひとり世帯の増加とともに、ホンパプ(一人メシ)、ホンスル(一人酒)を肯定するムードになってから7、8年が経つだろう。

『Missナイト & Missデイ』のイム・スンが言う「好きでもない料理(暗にサムギョプサルと言っている)を食べさせられる」ことは避け、好きなものを好きな店で食べる人が増えたのだ。

 酒もただ酔うために飲むのではなく、味や料理とのマリアージュを楽しむために飲む人が増えた。衣食住の住を捨て、半ば放浪生活を送りながら、洒落たショットバーでひとり好きなウイスキーを楽しむ女性(イ・ソム)が主人公の映画『小公女』は、それを誇張表現した作品だ。

 筆者は軍隊式の飲み会は好きではないが、飲める者どうしで次々に杯を乾してゆき、他愛もない話をする席は大好きなので、こうした変化にはちょっと寂しさを感じてしまう。