韓国アシアナ航空に乗ることが多い。僕はスターアライアンス系のマイルを貯めていて、安い運賃で多くのマイルを貯める……という条件で選んでいくと、アシアナ航空が浮上してくる。

 アシアナ航空はLCCではないので機内食が出る。何回か乗っていると、機内食の傾向がわかってくる。2種類の機内食から選ぶとき、ひとつはビビンバということが多い。もう一種類はフライトによって違ってくる。

 どちらの機内食を選んでも必ずついてくるものがある。チューブに入ったコチュジャンである。

飛行機の機内食にもついてくるコチュジャン、なぜそこまで料理に混ぜる?

 僕はビビンバという料理があまり好きではない。それぞれの素材はいい味なのだが、全体にコチュジャンを加え、しっかりと混ぜて食べるという食べ方が味覚に合わないといったほうがいいだろうか。それぞれを別々に食べ、ときにコチュジャンをつけるという食べ方が好きなのだ。しかし、ビビンバを前にすると、そういった食べ方は邪道という韓国人の声が聞こえてきそうで、つい遠ざけてしまうのだ。

 ソウルから中国の杭州に向かうアシアナ航空に乗ったときだった。食事の時間になった。例によって1品はビビンバ、もう1品はとんかつだった。僕はとんかつを選んだ。

 隣には韓国人の夫婦が座っていた。彼らもとんかつを選んだ。ビビンバはいつも食べているから、飛行機ではとんかつ……そんなところだったのだろうか。

 隣の韓国人の食べ方がどうしても目に入ってきてしまう。出てきた機内食は、左側に白いご飯、右側にとんかつと野菜が盛りつけられていた。

 韓国人の夫婦は、横についていたコチュジャンのチューブを手にとり、とんかつの上にかけた。そして白いご飯を半分ほどとり、とんかつの上に移した。そしてあろうことか、混ぜはじめたのである。それも実に丁寧に混ぜる。途中でご飯を継ぎ足し、また混ぜ混ぜする。ご飯ととんかつ、野菜が一体化し、全体が赤くなったものを、満足そうに口に運んだ。

「とんかつも混ぜるのか……」

 僕は呆然と隣の韓国人が口にする機内食を見つめていた。

 人には好みの食べ方、というものがあるから、とやかくいうつもりはない。が、アシアナ航空の機内食で出てきたとんかつは、日本風に食べることを想定している気がする。つまりご飯ととんかつは別々に食べる。コチュジャンの味がほしかったら、とんかつの上に少しかける……。そんなつもりで盛りつけた気がする。いや、それは僕が日本人だからそう思ってしまうのか……。

 韓国料理はレベルの高い料理だと思う。韓国の食堂で食べるその味には唸ってしまうことがある。しかし料理によっては”混ぜる”という行為が加わってくる。その代表格がビビンバだろうか。

韓国料理はとにかく“混ぜる”