Netflix配信の人気ドラマ『隠し味にはロマンス』は韓国南西部の地方都市、全州チョンジュ)が舞台だ。路地裏食堂を切り盛りする料理人のヨンジュ(コ・ミンシ)、ソウルから都落ちしたボム(カン・ハヌル)、全州の有名食堂のドラ息子チュンスン(ユ・スビン)、チュンスンの店の従業員ミョンソク(キム・シンロク)が仕事帰りに飲みに行ったり、ケンカしたり、デートしたりするシーンで全州の街並みがよく映る。

 そのため、日本のソウルや釜山リピーターから、「次は全州に行ってみたい!」という声がよく聞かれるようになった。朝鮮王朝を開いた李成桂(イ・ソンゲ)ゆかりの地なので観光資源も豊富だが、なんといっても食べる楽しみにあふれている街だ。美食の里、全州で食べるべきものを紹介しよう。(記事全2回のうち前編)

■『隠し味にはロマンス』の舞台、美食の里として有名な全州で食べるべきものは?

●大衆食堂の日替わり定食

 全州はソウルから高速鉄道で2時間弱、最短で1時間40分ほど。全州に限らず、全羅道(チョルラド)は土地が肥沃で食材に恵まれているため、昔から食文化が発達していることで有名だ。

 20種もの食材が盛られたビビンパはそれを象徴する華やかな食べ物だが、この街の食の豊かさを実感したいなら、地元の人が通っている大衆食堂で、ペクパン(日替わり定食)を食べるべきだろう。他の地域と比べると、2割くらい安く、それでいて皿数が多い。

十年前の例だが、サンマの煮物を主菜とした写真の定食が3000ウォンだった
こちらも十年前の例。魚のスープを主菜とした定食2人前が8000ウォン

コンナムルクッパ

『隠し味にはロマンス』で最初はヨンジュの敵役だったチュンスンは、全州名物コンナムルクッパ(豆モヤシの汁かけ飯)の有名店の跡取り息子だ。韓国の汁物や汁かけ飯は、肉や魚を使ったものがほとんどなのだが、コンナムルクッパはふだん脇役扱いされる豆モヤシが主役を張る珍しい食べ物。豆モヤシのシャキシャキとした食感とイリコなどでダシをとった上品なスープが魅力だ。

 ヘジャンクッの一種なので、胃に負担がかかりそうな肉が入っていないのは酔い覚ましスープとしては正統派と言える。朝、専門店に行くと、酔い覚ましのはずなのに、コンナムルクッパを肴に酒を飲んでいるスルクン(酒飲み)も散見されるが、真似しないほうがよいだろう。

 劇中でチュンスンが料理コンテストに持ち込んだ韓方ドリンクの母酒(モジュ)は、コンナムルクッパの店で飲める。

『隠し味にはロマンス』の料理人ヨンジュお気に入りの南部市場で売られている豆モヤシ
人気店のひとつ「サムベクチプ」のコンナムルクッパ
『隠し味にはロマンス』に登場した韓方ドリンクの母酒はコンナムルクッパの店で飲める