Netflix配信中の日韓グルメバラエティ『隣の国のグルメイト』シーズン2の「究極の味対決」第9話では、松重豊がソン・シギョンをイカ料理でもてなした。その返礼として第10話でソンが選んだのは韓国のタコ(テナガダコ、韓国語でナクチ)料理だった。
■韓国のタコvsイカ、それぞれの魅力
タコとイカは、どちらも韓国人の大好物なので、もし食べられないようなことになったら大規模デモが起こるだろう。では、食材としてのイカとタコ、韓国ではどちらが存在感があるだろう?
値段的にはタコがやや高価だ。『隣の国のグルメイト』タコ料理編に登場した「ヘテ食堂」は、ソウル郊外にある店ということもあり安価なほうだが、ナクチタンタン(テナガダコの叩き)が15,000ウォン、ホロンクイ(テナガダコを割りばしに巻き付けて焼いたもの)が35,000ウォン、ヨンポタン定食(タコ汁定食、副菜13皿付き)が25,000ウォンはする。いずれも1人前の値段だ。

一方、イカは江南の一等地にある店でも、オジンオティギム(イカ天ぷら)が15,000ウォン、オジンオジョンゴル定食(イカ鍋定食)やオジンオプルコギ定食(イカ焼き定食)が9,000ウォンで済む。
『隣の国のグルメイト』で松重豊がもてなしたイカに対してイカで返礼するのかと思ったら、ソン・シギョンがタコを選んだのは、イカでは庶民的過ぎて失礼かもと判断したからかもしれない。やや庶民的で、焼いたり揚げたりしたときの独特の歯ごたえのあるイカは、タコの永遠のライバルである。

今の韓国のおしゃれな映画館からは想像できないかもしれないが、2000年代初頭まで映画館の前にはかならずと言っていいほどイカ焼き売りの屋台があり、劇場内にはイカの匂いが充満していたものだ。筆者が最後にイカ焼きを食べながら映画を観たのは2000年の釜山、BIFF広場の釜山劇場。ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、イ・ヨンエ主演映画『JSA』だったと記憶している。
今、BIFF広場の前には25年前と同じように屋台が並んでいるが、イカ焼きの香ばしい匂いよりホットッの甘い香りが支配的で、隔世の感がある。