Netflix日韓グルメ番組『隣の国のグルメイト』シーズン4第12話の舞台は、北海道のほぼ中央に位置する旭川市。松重豊が『孤独のグルメ』の撮影でも訪れた老舗酒場「独酌 三四郎」にソン・シギョンを案内した。

 番組では名物の炭火焼鶏、コマイ(鱈の一種)焼き、締めたニシンなどを肴に二人が熱燗を味わったが、茄子焼きをはじめとする野菜の一品料理を食べたときにソン・シギョンが発した言葉には、日韓両国の野菜料理について思いを新たにさせられた。

■ソン・シギョンが茄子焼きに釘付けになった理由とは?

 焼き炭の上を転がる茄子。黒紫色の皮から水気が染み出てくる。皮をむくと淡い緑色の果実が姿を現す。おろし生姜を添える。ふられた鰹節が踊り出す。「サッとお醤油かけて召し上がってね」と女将の声。

 茄子焼きをつつきながら、二人の会話が弾む。ソン・シギョンの言葉を整理すると、韓国では日本の茄子焼きのような野菜だけの一品料理があまりないということだろう。

日本の居酒屋で食べられる野菜の一品料理は韓国人旅行者にも喜ばれる。写真は大阪で食べたシンプルな水茄子

 筆者は1989年に初めてソウルに行ったが、感動したことのひとつが、主菜として何かを頼むと野菜の漬物や和え物などの副菜(パンチャン)が添えられることだった。グルメ番組などで、韓国を訪れたタレントが頼んだ主菜が出てくる前にテーブルが副菜でいっぱいになり、不安から驚き、そして喜びに変わるあのシーンである。

 以来、韓国=野菜をたっぷり摂れる国と認識するようになり、韓国のガイドブックをつくるときも、それを強く訴え続けた。

 今でこそ、韓国で食べるものの値段は日本と互角か、料理によっては日本以上だが、2000年前後は大衆食堂の定食が3,500~4,000ウォンだった。当時はレートもよかったので300円程度でごはんとチゲなどの主菜+4~5種類の副菜を楽しめたのだ。しかも、キムチナムルなどの副菜はおかわりもできた。これを野菜天国と呼ばずしてなんと呼ぼう。

食文化が豊かなことで知られる全羅道で食べたテンジャンチゲには野菜の副菜が10皿以上も
韓国の大衆食堂のチョングッジャン定食4,500ウォン(2002年撮影)