暑い夏、韓国の人たちがよく食べる麺料理にコングクス(コンククス)がある。夏限定でメニューに加える店も多く、日本でいったら冷やし中華にあたるような麺料理である。コングクスの「コン」は豆の意味。大豆からつくったもので、いってみれば豆乳である。日本では豆乳麺と訳されることもある。麺は店によって違うので、コングクスといったら、スープが豆乳系と思えばいい。

■超糖で低糖のトウモロコシ入りコングクス、全州で生まれたメニュー

 このコンクグスは僕の好物でもある。僕は無類の豆乳好きで、アジアに出向くと豆乳に染まった朝食になることが多い。それを麺に使った韓国人の発想は脱帽もので、その流れで、暑いソウルではコングクス……夏の定番昼食の座を占めていた。

 そのコングクスに新顔が登場した。豆乳にトウモロコシ(オクスス)を加えたものだった。今年の夏にはSNSで話題になったという。なんでも超糖で低糖という触れ込みだった。今年の夏は暑く、ピンスという韓国式かき氷をよく食べた置き土産に悩む人が多かった。体重が増えてしまったのだ。そこで秋になり、ダイエットに走る機運が生まれた。カフェでは低糖の飲み物に人気が集まった。

 低糖のコングクスと耳にしたとき、妙に納得した。麺料理も低糖というわけだ。しかし超糖がわからなかった。低糖と矛盾するのではないか。

 地下鉄のシンノンヒョン駅に近い店に出向いた。超糖で低糖のトウモロコシ入りコングクスで話題の店だった。全州で生まれた老舗店でもあった。

 出されたコングクスを啜った。くどい甘さはなく、トウモロコシのほんのりとした甘さが口のなかに残った。これが超糖というものなのだろうか。そのあたりがよくわからない。一緒に店に入った知人は、AIが答えた模範解答を見ていた。

「コングクスには塩派と砂糖派があるようですね。全羅道は砂糖派でソウルは塩派だそうです。コングクスは塩味だとばかり思っていました。下川さんもソウルでコングクスを食べていたから、塩派だったんですよ。全羅道では、テーブルに砂糖が置かれていて、それをかけて味を整えて食べるそうです」

 その話にタイの麺料理を思いだした。

「タイにはクイッティオっていう一般的な麺料理やパッタイというタイ風焼きそばがあって、タイ人はその麺に砂糖をかかて食べる。僕もそうします。それに似ているんでしょうか。ただその砂糖は甘くするというより、スープにコクを出す効果があるってタイ人はいいます。僕もそう思う。スープに砂糖を加えると、味の深みがます。

 でも、コングクスの砂糖は違う気がする。ダイレクトに甘さを加える感じ。でもここは超糖でしょ。砂糖を入れずに、トウモロコシで甘さを出すってこと?」

 互いに首をひねった。砂糖ではなく、トウモロコシの成分である自然な甘さが超糖で、それが低糖に通じるということだろうか。これは訊いてみるしかない。通りかかった店員さんに知人が訊いてくれた。しかし店員さんの説明を聞く知人の顔は晴れない。

「つまりこういうことらしいんです。通常のトウモロコシを入れると、でんぷん質が多くなって低糖にならない。でも超糖トウモロコシという種類があって、これは甘さが強いが、でんぷん質が意外に少ない。だから低糖なんだそうです。ここは麺もそば粉100%で、でんぷん質を抑えているっていうんですが……」

 互いに超糖トウモロコシというものをイメージできないのがいけなかった。

 しかし箸が進んだ。甘さに角がないせいか口当たりがいい。スープはさっぱりポタージュといったらいいだろうか。これで店員さんがいうようにでんぷん質が少ないなら、かなりの満足感がある。

 値段は14000ウォン。日本円で1600円ほどとそこそこするが、穏やかな甘さと糖質が少ないという安心感が加わって、高いとういう気にならない。SNSで話題になった理由はそんなところにあったのかもしれない。満足感があってダイエット効果も期待できるというわけだ。

タイのパッタイ。テイクアウトセットにも、唐辛子と砂糖がつく