私の事務所の代表(日本人男性)の釜山・ソウル・大阪10日間の陸海空旅行記。
シリーズ連載4回目は、釜山の行きつけのテジクッパの店で豚肉とマッコリを楽しみ、釜山らしいタルトンネを散歩した後、KTXでソウルに向かう。そして、3年余のあいだ夢にまで見た、夜の鍾路3街と再会する。
■釜田市場散歩のあと、釜山に来たらかならず食べるあれを
大阪と釜山を結ぶ国際定期船パンスタードリーム号で、3年2カ月ぶりに韓国に入国。釜山の空気を吸い、景色を愛で、酒と肴を楽しみ、だいぶリラックスしてきた。昨夜は旧市街の酒場を3軒ハシゴしたが、おしゃべりで発散したせいか、二日酔いは軽い。
地下鉄に乗って釜田市場へ向かう。釜山の台所と呼ばれる巨大な食材天国だ。朝ごはんを美味しく食べるための前戯的な散歩である。久しぶりに明太テガリ(鱈のかぶと揚げ)横丁を見たかったのだが、なかなかたどり着かない。店番のおじさんおばさん何人かに聞いたが、みな違うことを言う。
結局たどりつけなかったのだが、別にかまわない。無意味なほっつき歩きのない旅は旅ではない。おかけでこの巨大市場を5割がた歩くことができた。
遅い朝食は凡一洞のテジクッパ専門店『ハルメクッパ』と決めていた。20年前、創業者のハルメ(平壌からの戦争避難民)が健在だった頃、取材で訪れて以来、釜山に来たらかならず立ち寄る店だ。ハルメが亡くなり、お嫁さんに代替わりしてから十数年経つ。平日の午前中にもかかわらず、店内は9割がた埋まっている。
凡一駅前の現代百貨店からこの店に来るときは、古びた日本家屋街を右手に見ながらクルムタリと呼ばれる橋を渡るのが楽しみだったのだが、日本家屋街は撤去されていた。橋のたもとにはいつも野良猫が戯れていた。あの子たちはどこに行ってしまったのだろう。
5分ほど待ってすぐ席に案内された。同業他店の白濁したこってりスープと違い、この店のとんこつスープは半透明であっさりしていて朝食にびったりだ。アミの塩辛やニラを加えて自分好みの味にする。
「このニラをたっぷり入れると旨いんだ」