さて、ソウルのチャンポン。眺めると仁川のチャンポンとはスープが違った。仁川チャンポンのスープは赤いが澄んでいた。しかしソウルのチャンポンのスープは、赤いというより赤黒く、濁っている。

 仁川のチャンポンは、海鮮といっても、タコやイカの存在感があり、麺は添え物といった風情だった。ワタリガニは食べるというより出しに近い。

 ソウル駅のフードコートで出されたチャンポンの具はイカ、そしてワタリガニ。その量は多くない。つまりソウルのチャンポンは麺を味わう料理だった。

 まずスープを飲んでみる。辛い……がコクがある。ほんのりとした甘みも……。そして麺を啜る。スープと絡んで納得するが、なにか後味の悪さが残る。うま味調味料? 疑ってしまった。

 食べながらタイ料理のトムヤムクンを思い出していた。地方のトムヤムクンのスープはかなり辛く、澄んでいた。一度、パタヤの先のラヨーンの海沿いのレストランでトムヤムクンを食べたことがある。スープは透明だが、背筋がのびるほど辛かった。涙や鼻水だけでなく、よだれが出てしまう。あの辛さは尋常ではなかったが、どこか具材やスープがすべてとんがったような存在感があったという強い印象が残った。

 それに比べると、バンコクのトムヤムクンのスープは濁っている。ココナツミルクを入れているからだ。

 仁川のチャンポンとソウルのチャンポン。その違いは、タイのトムヤムクンの違いに似ていた。チャンポンのルーツ探しの旅……料理は都市に入って甘さが加味されていくという話に出合っていた。

ソウル駅のフードコートのチャンポン。たくあんとカクテキがつく