考えてみると、『宮廷女官チャングムの誓い』において、済州島は非常に重要な役割を担っていた。濡れ衣を着せられて流刑となったチャングムは、済州島で大きな変貌を遂げる。彼女は復讐心に燃え、何度も逃亡を試みる。その度に捕まり、苦境に立たされるのだが、医術を学ぶことで再び宮廷への道を歩み始める。まさに、済州島は再起を図る場所として描かれており、象徴的なウェドルゲの奇岩は魂を奮い立たせるような造形美にあふれている。
嬉しいことに、ウェドルゲの眺めが広がる場所には、チヂミの屋台が立ち並んでいた。隣にはテーブルと椅子が用意され、落ち着いてチヂミとマッコリを堪能できた。特にチヂミは極上の美味しさがあった。
しかし、済州島は南海上の孤立した島であるため、天候が変わりやすい。この日も、晴れたかと思えば急に小雨が降り始めた。「濡れてもいいかな」と覚悟を決めた瞬間、雨は突如として止んだ。そのおかげで、さらなるマッコリとチヂミの追加注文ができた。
ほろ酔いになって駐車場に向かうと、数軒の土産物屋が姿を現し、多くの客も訪れていた。そこでタクシーを見つけ、車に乗り込んだ。車内で揺られながら、マッコリの心地よい酔いにひたった。北の方向には、誇り高き漢拏山が鮮明に姿を現している。
「ウェドルゲから西帰浦に行く途中から見る漢拏山が一番美しいですよ」
タクシーの運転手さんがそう言った。
実際、峻険な傾きを持った漢拏山の頂上に見とれた。済州島に住む人々が常に信仰の対象として崇めてきただけあって、思わず拝みたくなるような神々しさもあった。
勇壮な頂上を見ていると、「済州島は漢拏山のすそ野に広がった火山島」という歴然とした事実を改めて痛感することになった。