■新しい釜山へ

 バスが南方向に進路を変え、広安大橋(ダイアモンドブリッジ)にさしかかる。右手に見えるマリンシティの高層ビル群は頂上部分が雨で煙っているが、これはこれで趣がある。

雨に煙るマリンシティのビル群。広安大橋を海雲台方向に走るバスの車窓風景

 晴天の広安大橋とマリンシティが見たかったら、かっこうのドラマがある。Netflixシリーズ『D.P. -脱走兵追跡官-』だ。第3話の冒頭、主人公ジュノ(チョン・ヘイン)と先輩ホヨル(ク・ギョファン)が、オープンエアの観光バスに乗って今の私とは逆方向に橋を渡るシーンがあった。青い空と海。2人の背後にはマリンシティの高層ビル群。BGMは、海雲台、広安里、冬柏ソム(島)、南浦洞、チャガルチなど釜山の観光名所を連呼する「Busan Vacances」だ。

 しかし、この風景はまだ新しい釜山の序章に過ぎない。

■20年ぶりのパラダイスホテル釜山

 広安大橋を渡ったバスが海雲台エリアに入る。北方向には三つの超高層タワーがそびえ立っている。2年前に行われたオンラインイベントでライブ映像は観たことがあるが、目の当たりにすると遠目にもすごい迫力だ。バスの右手に見えるシックな佇まいのホテル、ウェスティン朝鮮釜山だけが昔の姿をとどめていて、ここが海雲台だとかろうじて実感できる。

 今夜の宿はパラダイスホテル釜山。海雲台で最後に純粋な旅行を楽しんだのは2003年のことだ。日本で冬ソナブームが巻き起こった頃である。そのときもパラダイスホテル釜山を利用した。当時は海雲台で高い建物と言ったら、このパラダイスと今は撤去されたハイアットリージェンシーくらいだったはずだ。

今の海雲台の風景。中央の3本のタワーの右端が展望台「BUSAN X the SKY」のある海雲台LCTランドマークタワー。その左下がパラダイスホテル釜山 画像提供: BUSAN X the SKY
パラダイスホテル釜山のツインルーム
初日の夕食後に立ち寄ったショッピングモール「ミルラク・ザ・マーケット」の正面入り口
「ミルラク・ザ・マーケット」では、食事やスイーツ、アルコールも楽しめる
「ミルラク・ザ・マーケット」の南側には、階段式の休憩スペースがある