キムチと豚肉の世界……。そこにはサムギョプサル＋キムチの食べ方以外に、熟成したキムチ、つまりキムチの古漬けをあえて使った豚肉料理もある。

　古漬けキムチのことを韓国語でムグンジキムチという。一般的には漬けてから6ヵ月以上のキムチを指すようだが、古漬けファンというものは、もう少し長く漬けて、酸味をより強くしたキムチを好む傾向がある。古漬けキムチを出す店も、そのあたりの心理をわかっていて、2年物、3年物といった世界に入り込んでいく。どこか焼酎やワインに似てくるわけだ。そしてムグンジキムチといったら、だいたいが白菜キムチになる。

　ファンというほどでもないが、僕も白菜キムチの古漬けが好きだ。3年物白菜キムチなどと聞かされると食指が動く。

　キムチの古漬けを使った料理の代表格がキムチチムだ。チムは蒸すという意味で、白菜キムチを蒸すのか、と思うかもしれないが、蒸すのは豚肉。蒸し豚古漬けキムチ料理ということになる。

■キムチの古漬けと豚肉の蒸し料理「キムチチム」とは？

　はじめて食べたのはいつ頃だろうか。酸味の効いたキムチが好きという僕を知人たちが気遣い、

「だったらキムチチムじゃない？」

　と連れていってくれた。

　出てきたのは鍋だった。かなりの量の白菜キムチが鍋のなかにでんと横たわっていた。そしてその脇には厚切りの蒸し豚があった。

　知人によると、店によっては鍋ではなく、白菜キムチの古漬けと蒸し豚が別々に出すところもあるいう。客は蒸し豚を古漬けキムチでくるんで食べるのだという。

　蒸し豚や茹で豚をこういうスタイルで食べる料理には何回か出合っていた。冬場になると生カキを注文する韓国人は多い。この生カキを豚肉で挟むようにして食べる。これがなかなかのとりあわせなのだ。

　こういった豚肉の食べ方の話になると、古漬けワールドからどんどん離れていってしまうので、今回はこの程度にして、キムチの古漬けと豚肉、つまりキムチチムに戻る。