Netflix話題作『ドクタースランプ』では、主人公のハヌル(パク・シネ)とジョンウ(パク・ヒョンシク)が、ドラマのタイトル通りスランプに陥り、それぞれ心の中にもモヤモヤを抱えている。

 子供の頃から優等生だったが、社会に出てから初めて大きな挫折感を味わった二人は、気持ちを切り替えて人生を楽しもうとする。

 今回は、そんな『ドクタースランプ』劇中のジョンウとハヌルの行動から、「韓国式パラムセロ(風を浴びる=気晴らし)」を学んでみよう。(一部、作品のネタバレを含みます)

■気晴らし1「近所のオアシスシュポ(食料雑貨店へ)へ」

 夜、家を出て「城郭ギル シュポ」という食料雑貨店の店先の縁台に座って、アイスを食べるジョンウとハヌル。シュポはスーパー(マーケット)の韓国的発音だ。

 食堂や飲み屋に行くほどではないが、家族のしがらみからほんの一瞬解放されたいとき、近所のシュポはかっこうの駆け込み寺となる。

 日本でも配信されている秀作映画『夏時間』でも、主人公(チェ・ジョンウン)の父(ヤン・フンジュ)と叔母(パク・ヒョニョン)が家族の目を気にせず気楽に話したいとき、シュポに出かけ、縁台で缶ビールを飲んでいた。

■気晴らし2「辛いものでエンドルフィン、ゲーセンでドーパミンを分泌」

 シュポから屋台に気晴らしの場を移した二人が、トッポッキをつつく。これも韓国人らしい行動だ。

「辛いものを食べるとストレス解消になる」というジョンウに、医者らしく「脳が辛さを痛みと認識してエンドルフィンを分泌するから気分がよくなる」と答えるハヌル。

 20年くらい前、私が日本人の前で、「辛いものを食べるとスッキリするでしょ?」と言っても、誰も同意してくれなかった。しかし、エンタメや食文化の韓流が日本に定着した今なら、賛同してもらえるだろう。

 私がむしゃくしゃしたときは、アグチム(アンコウとモヤシを辛く蒸し煮したもの)とソジュ、またはホンオチム(エイの蒸し煮)とマッコリを選ぶ。前者は舌への刺激、後者はノドの奥に広がる揮発性の刺激でエンドルフィンが大量分泌するだろう。

アグチムは韓国料理のなかでも特に辛い

 劇中では、ジョンウとハヌルはこのあと、娯楽室(オラクシル=ゲーセン)の音と光で眼窩前頭皮質を刺激してドーパミンを分泌し、リラックスした表情で城壁脇の夜道を歩くのだが……。