Netflix日韓グルメ番組『隣の国のグルメイト』シーズン2第5話で、韓国人歌手ソン・シギョンが俳優の松重豊を案内した中華料理店は、ソウル旧市街(漢江の北)を東西に流れる清渓川(チョンゲチョン)近くの観水洞(クァンスドン)にある。

 観水洞から北方向に広がるやや猥雑な一帯は鐘路3街(チョンノサムガ)と呼ばれ、かつては中高年の遊興施設が目立つエリアだったが、この十数年間で大きく変貌し、今や若者たちであふれるホットスポットになっている。(記事全2回のうち後編)

■西スンラギルが鐘路3街エリアで最高の人気スポットに

 鐘路3街エリアで今もっとも注目されているのは、鳳翼洞(ボンウィクドン)、観農洞(クァンノンドン)と朝鮮王朝の王族を祭っている宗廟(ジョンミョ)に挟まれた通り、西スンラギルだ。

 東側が宗廟の石垣なので独特の風情があり、同じ伝統家屋街でもかなりごちゃごちゃした益善洞とはまた違った洗練されたカフェやバーができている。パク・シネパク・ヒョンシク主演のNetflixロマンチックコメディ『ドクタースランプ』のロケが行われたカフェもある。

鐘路3街エリアのなかでも特に人気のある西スンラギル。左が宗廟の石垣
2025年の西スンラギル(北側から南側を撮影)

 筆者がマッコリに関係する仕事を多くしていた2010年頃、じつは飲食業関係者から西スンラギルでマッコリ酒場を共同運営しないかという話をもちかけられたことがある。事情があって実現しなかったが、もし関わっていたらどうなっただろう。昔ながらのデポチプ(マッコリ酒場)の再現を考えていたので、マニアック過ぎて繁盛したかどうか微妙である。細々と続けたとしても、西スンラギルがブレイクする2023年頃までもちこたえられたかどうか……。

2010年の西スンラギル。商業施設は数えるほどしかなかった

■鐘路3街の映画館で韓国の名優たちに思いを馳せる

 鐘路3街駅の1~2番出入口の北側には、歴史のある映画館「CGVピカデリー1958」がある。往年の名画『接続 ザ・コンタクト』で、ハン・ソッキュ扮するラジオ局PDとチョン・ドヨン扮する通販会社オペレーターがこの映画館の前で出逢うシーンは、韓流以前からの韓国映画ファンの心に刻まれている名場面だ。

 夏場の街歩きは体力を消耗するので、冷房の効いた映画館で休憩するのもいいだろう。ビルに向かって左手の階段を降りると、チケットやドリンクを売るロビーにつながる通路になっていて、左手の壁には「HALL OF FAME」(名誉の殿堂)のパネルがあり、1960年代から2010年代に活躍した俳優たちの写真が掲示されている。

「CGVピカデリー1958」の外観
「CGVピカデリー1958」ロビー階の「HALL OF FAME」。チョン・ウソンキム・ヘスソン・イェジンファン・ジョンミンらの顔が見える