黒ヤギ肉はカオカームーの肉と食感が同じだった。トロトロで食べやすい。

 ……ということは、ここでも黒ヤギ肉を特製のたれで1日以上煮込んでいるのだろうか。大変な料理なのだ。その間に脂肪分が溶けだし、たれと混ざり、ヤギ臭さが消えてしまうのだろうか。1日以上煮込んだヤギ肉を土鍋に入れ、辛味噌やスープを流し入れて味を整えていく。

「これならまったく問題はない」

 辛味噌と黒ヤギの肉がうまく馴染んでいる。白ご飯が進む。

 改めて韓国人は肉の扱いがうまいと思った。臭みがない豚肉牛肉は鉄板や網で焼く。鶏肉からはいいスープをとる。肉の特徴を引き出して料理を仕立てていってしまう。

 臭いが強いヤギ肉は長時間煮込む。これで獣臭が消え、肉も柔らかくなっていく。

 昼どきだった。中年のおじさん4人組が鍋を囲んでいた。脇にはマッコリの壜が置かれている。トロトロになるまで煮込んだヤギ肉にはマッコリが合うということらしい。

 知人の話では、ヤギ肉を好むのは男性のシニア層だという。この店も夜には飲み屋のようになるという。

 韓国でも、女性や子供は、黒ヤギの肉と耳にして引いてしまうことが多いという。タイのように、「とろとろ肉鍋」といった名前にしたら、女性や子供も箸がのびるかもしれない。

 黒ヤギ肉を食べながら、そんなことを考えていた。