Netflix配信『隣の国のグルメイト』で歌手ソン・シギョンとともに、韓国と日本の食文化を伝える俳優・松重豊。彼が案内役を務めた日本のTV番組『松重豊の殿堂メシ!!~博多から韓国プサンへ~』(RKB毎日放送)は、首都ソウルにはない釜山の食の魅力を伝える興味深い内容だ。番組に登場した釜山の美味しいものを紹介しよう。

■釜山名物オデンの美味しい食べ方

 同番組で松重豊が歩いたのは、釜山の国際市場の西隣に位置するプビョン・カントン市場のオムク・コルモク(オデン横丁)。店の名前は「モッコカルレ サッカルレ」。韓国語で「食べて行く? 買って行く?」という意味だ。親しみやすい口語で、その場で食べることもできるし、テイクアウトもできることを伝えるおもしろい店名だ。話のタネに覚えておくとよいだろう。

 韓国の練り物はここ数年、堂々たる釜山土産のひとつになった。釜山駅舎の中や駅前には専門店がいくつもある。筆者も釜山から船で日本に帰るとき、船内で飲む酒のつまみとして、番組後半に出てくるコロッケのように揚げた練り物を買ったことがある。松重の反応を見ればわかるように、汁につかった練り物を食べ慣れている日本人のおでん観を覆す食べ物だった。一度試してみるとよいだろう。

 韓国式オデンのおすすめの食べ方は、やはり冬場の呑み歩きの三軒目くらいで、つまみは軽くてよいというときに頼むオデンタン(おでん鍋)。そして、宿に帰る途中、酒で温まった体が冷えそうになったときに屋台でつまむオデンコチ(串に刺した練り物)だ。日本で呑むときのように24時間営業の粉物店でラーメンを食べることもできるが、そこまでしなくてもという人にはちょうどいいだろう。

ソウルの飲み屋で食べたオデンタン
大阪と釜山を結ぶフェリー「パンスターミラクル号」のビュッフェで食べられる屋台式オデンコチ

■釜山郊外で食べたいヤギの焼肉

 松重豊が釜山の金井山で食べたヤギ(黒ヤギ)の焼肉は、『隣の国のグルメイト』でソン・シギョンとともに体験した鴨焼肉や豆腐料理と並んで、水と空気のきれいな郊外で食べたくなるものだ。

 肉食文化の発達した韓国でも、とくに薬効があるといわれるヤギ肉。ドラマでもよく知られている朝鮮王朝時代の医師ホジュンの著作『東医宝鑑』にも「陽気(体を温め活発にするエネルギー)を育むにはヤギが最高」と書かれている。

 沖縄や海外でヤギ肉を食べたことがある日本の人は獣臭を想像してしまうかもしれないが、韓国は肉をさまざまなタレで和えたり、漬けたりすることに長けている。ヤギ肉も醤油、砂糖、料理酒、ニンニク、コショウなどが使われたタレで漬けてあるので、匂いを気にせず食べることができるだろう。

山の金井山で食べたヤギの焼肉(ヨムソプルコギ