Netflixグルメ番組『隣の国のグルメイト』シーズン4第11話では、釜山テジクッパ専門店「シンチャンクッパ」が紹介されたが、釜山にはテジクッパの店が無数にある。筆者は釜山をはじめ、晋州(チンジュ)、密陽(ミリャン)、慶尚北道聞慶(ムンギョン)、全羅南道光州(クァンジュ)、順天(スンチョン)などの韓国各地で、テジクッパの食べ歩き旅をしたことがある。今回は、釜山とソウルのおすすめ店を紹介しよう。

■映画『弁護人』でテジクッパ好きの弁護士に扮したソン・ガンホ

「ソウルで働いていたとき、旧正月に釜山に戻ってきてテジクッパを食べると、ああ故郷に帰ってきたんだなあってホッとしたもんです」

 釜山で出会った若いタクシー運転手さんの言葉だ。

 そんな釜山とその周辺地域の人々のテジクッパ愛を確認できる映画がある。ソン・ガンホが第16代大統領ノ・ムヒョンの弁護士時代を演じた『弁護人』だ。ノ・ムヒョンもソン・ガンホもともに釜山文化圏の金海(キメ)出身である。

 ソン・ガンホ扮する主人公は苦学生時代、キム・ヨンエ扮する女将が切り盛りするテジクッパ屋に通っていた。参考書を買いたくてクッパ代が惜しいときは食い逃げまでしたが、晴れて弁護士になったときは女将に謝罪しにやってきた。

 弁護士事務所を開設してからも主人公のテジクッパ屋通いは続く。あるときは相棒(オ・ダルス)に「テジクッパはニラをたくさん入れると旨いんだ」と講釈をたれる。また、あるときは相棒が「たまには違うものを食べよう」と言っても耳を貸さず、クッパ屋に引きずり込む。

釜山のテジクッパにはニラが添えられるのが普通

■往年の名作『友へ チング』にも登場した歩道橋近く老舗店「60年伝統ハルメクッパチプ」

 釜山の東区、凡一洞(ポミルドン)にある老舗店「60年伝統ハルメクッパチプ」。人気グルメ番組『水曜美食会』で取り上げられて、数年の間は平日でも行列ができていたが、あれから十年。平日は本来の姿である地元客のための店に戻り、ふらっと来ても利用しやすくなった。

 この店の創業者は、映画『国際市場で逢いましょう』の主人公(ファン・ジョンミン)同様、朝鮮戦争のとき半島北部(平壌)から避難してきた人だ。

 創業者が亡くなり、お嫁さんが跡を継いでから15年以上経つが、上品なスープは今も健在。豚の臭みが出ないよう、骨と肉を適度に煮込んだスープは半透明で、他のテジクッパの店の白濁したスープと違って淡白だが、豚の旨味はしっかり出ている。唐辛子は少ししか使われていないので辛くなく、朝ごはんにぴったりだ。

「60年伝統ハルメクッパチプ」には、ごはんの代わりにを入れるテジコギククスもある