■チャガルチ市場で3年2カ月ぶりの韓食

 お昼だ。楽し気にランチに向かうサラリーマンやOL集団とすれ違う。

 歩きながら久しぶりの韓食を何にするか考える。ナッコプセ(手長ダコとホルモンとエビの鍋)? ミルミョン(小麦粉麺の冷麺)? 刺身? いや、カレイや太刀魚の揚げ焼きでマッコリもいい。

『国際市場で逢いましょう』で若いドクス(ファン・ジョンミン)と年老いたドクスが交差したチャガルチ市場の海沿いを西方向に歩いていると、湯気が立ってる大衆食堂を発見し、ふらふらと吸い込まれるように入ってしまう。

 カルククスが人気の店のようだが、久しぶりの韓食はやはり汁かけメシだ。血の煮凝りとホルモンの入ったソンジクッを頼む。もちろんマッコリも。

新東亜水産物総合市場の建物からチャガルチ市場を見下ろす
チャガルチ市場の西側の大衆食堂で飲んだ釜山の生マッコリ

 店のおやじは愛想ゼロだが、片時もじっとしていない。大変な働き者であることが伝わってくる。ソウル鍾路3街の焼肉店「味カルメギサル専門」のオム・ジュワン社長と同じタイプだ。

 この3年の間に緑から透明に変わっていたマッコリのボトルをつかみ、椀にどぼとぼと注ぐ。白く甘い誘惑をひと息で胃の腑に流し込む。

 いかん、涙が出そうだ。(つづく)