韓国ではホンオフェといった。テーブルには寿司下駄のような木製の台が置かれ、その上にホンオフェが並んでいた。その形は上海のそれとかなり違っていた。上海は塩辛のようなぬめぬめとしたガンギエイだったが、韓国のそれは刺身のようだった。上海のガンギエイに比べて、発酵度合が低いのかもしれない。上海はとことん発酵させたから、あの刺激としびれ……。
いやそんなことはなかった。置かれたホンオフェは一見、刺身の姿をしていたが、十分に刺激臭を発している。料理の前に座る僕の鼻腔には、あのにおいがしっかりと届いている。
その脇に細長い皿が置かれ、その上に肉が並んでいた。
「これは?」
「茹でた豚肉(ポッサム)です。発酵させたガンギエイの肉をキムチと茹で豚で挟むようにして食べる。それがホンオフェの食べ方です」
豚肉……?。
刺身風のガンギエイの肉と豚肉というとり合わせがしっくりとこない。魚と肉である。日本で刺身を豚肉に挟んで食べる人などいない。味が想像できないのだ。そもそも刺身ではなく、発酵ガンギエイなのだが。
いわれるままに茹で豚とキムチで挟むようにして口に運んだ。
「……ん?」
そこで僕は茹で豚というものに開眼することになる。
(つづく)