クルはカキだ。しかしポッサムは? 茹でた豚肉をポッサムという。そのくらいの韓国語は知っていた。

 しかし生ガキと茹で豚は結びつかない。魚介類と肉……。日本人は普通、このふたつを一緒に食べることは少ない。鍋に入れるならわからないでもないが、ここは生ガキの店だ。

 生ガキと茹で豚が売り物で、それぞれ別々に出てくる料理だろうと思った。

 茹で豚と魚介類の組み合わせは発酵させたガンギエイの料理であるホンオフェで体験していた。しかし発酵ガンギエイは生ガキとはだいぶ違う。

 一軒の店に入った。そこそこの広さがあった。僕らが出向いた出版社をお得意様にしているようで、皆、店員とは顔見知りのよう。テーブルにはソジュや小鉢がすでにセットされていた。

 しばらくすると、大皿が出てきた。そこには生ガキ、キムチ、そして茹で豚が盛られていた。茹で豚は厚切り。ガンギエイを食べたときに出てきた茹で豚によく似ていた。なかなかの存在感で、カキを凌駕するほどのスペースを占めている。

 僕はテーブルの前で戸惑っていた。どう食べるのだろう。生ガキは味噌をつけて食べる? では茹で豚は?

 すると、隣に座った出版社の若い社員が食べ方を教えてくれた。

 まず、サンチュをとる。そこに茹で豚。その上に生ガキを載せ、キムチ。味噌やニンニク、唐辛子は好みで。そしてサンチェを巻くようにくるんで口に入れる。

 食べ方はわかった。しかしそこで悩む。生ガキと茹で豚を一緒に食べて……。火が通ったカキならなんとなく想像もつく。しかし生ガキは風味や苦味がある。カキ好きはそれが好きなのだが、茹で豚と一緒に口に入れていいのだろうか。

 なんだかそれぞれのよさが消えてしまうような気になる。生ガキにも悪いし、茹で豚にも申し訳ない気がする。

 小さなグラスにソジュが注がれて乾杯。そしてクルポッサムになる。教えてもらったようにサンチュでくるみ、口に運んだ。(つづく)

店は鍾路3街にあった。土地勘がなければ、少し敬遠してしまうような路地に面していた