韓国でもカキはよく食べる。韓国語でクル。ベストシーズンは12月といわれる。そう、これから旬というわけだ。
一般的には生ガキというより、火を通すことが多い。カキのチヂミ、カキが入ったクッパ、カキの鍋、そして焼きカキ……。しかしソウルには、生ガキを売り物にしている店もある。どちらかというと、酒飲みの世界に入っていってしまうが。
■韓国料理のクルポッサム、生ガキと茹で豚肉の組み合わせ
ソウルのある出版社との打ち合わせに出向いたことがあった。資金がからんだ話で、なかなか結論がでない。夕方になり、出版社の社長がこういった。
「今日はここまでにしましょう。いったんプランをもち帰って検討ということで。もう夕方なので、食事でも一緒に」
僕ら日本人は3人だった。どんなものが食べたい? と訊かれたが、即答は難しい。
「生ガキはどうですか。いい店があります。日本人はカキが好きでしょ」
出版社が入ったビルを出ると、その出口に出版社の社員が6人待っていた。皆、一緒にいくという。ひとりがこういった。
「うちの社長は生ガキが大好きなんです。冬、うちの会社の宴会は生ガキになることが多いんです」
そういうことか、と思った。社長は最初から今晩は生ガキと決めていたのだろう。ということは、費用はソウルの出版社が出してくれる? 僕ら3人は顔を見合わせた。
そのときの宴会は長かった。生ガキの店にはじまり、二次会はチキン屋、そして近くにある屋台……。冬場はビニールシートや厚いキャンバス地の布で店を囲む屋台がずらりと並ぶ。
生ガキの店ではソジュという韓国の焼酎がお決まりのようだった。二次会はビール。そして三次会の屋台でまたソジュ。ふらつく足で宿に戻った。
さて、生ガキ。場所は鐘路3街だった。酒飲みの街でもある。一本の路地を入ると、生ガキを出す店が並んでいた。韓国語は読めないが、写真が出ているのですぐにわかる。ということは、外国人もやってくるのだろうか。生ガキ目当ての日本人も多いのかもしれない。
出版社の社員のひとりがたどたどしい日本語こう教えてくれた。
「この通りはクルポッサム通りと呼ばれています」