ソウルで口にするタウナギも、釜山のそれに似ていた。多くの店がアルミホイルの上に載ってでてくる。それを温めて食べる。店によっては、きな粉なども器に盛られて出てくる。それを少しつけて食べる。海に生息するヌタウナギを出す店もあるというが、タウナギのほうが一般的だ。

「タウナギは体にいいっていいます。昔はおじさんのつまみでしたが、最近は若い女性も食べますね。ビールやソジュに合うからでしょうね」

 周囲を見ると、カップルもいるが、若い女性のグループもいた。

 酒のつまみのなかにはゲテモノ系の分野がある。おじさんが「これは勢力がつくぞ」などといって箸でつまむ世界だ。以前、タイ人の家族が日本にやってきた。日本食が食べたいというので、知り合いの小料理屋に連れていった。店はシラウオ、塩辛などのつまみを出してくれたが、20歳前後の娘さんや奥さんは手をつけなかった。気もちが悪いという。トライしたのは、酒のみのお父さんで、「酒に合う」と満足げだった。

 その伝でいえば、ソウルのタウナギの見た目は悪い。食に保守的な人なら敬遠するかもしてない。しかしソウルの女性たちは抵抗感がないらしい。

 以前、ホンオフェの店に入ったことがある。ホンオフェというのは、カンギエイを発酵させたもので、強いアンモニア臭がある。顔を近づけると涙が出てくるほどの刺激臭だ。この料理は韓国ドラマにもたびたび登場する。『明日に向かってハイキック!』や『ナルコの神』などが印象に残っている。エピソードをつくりやすいのかもしれない。

 このホンオフェ、ポッサム(ゆで豚)と一緒に食べると、臭いが和らぐ。しかしそれを知らなければ、かなり強烈な料理だ。珍味といってもいい。僕が入ったその店も女性客が多かった。マッコリを飲みながら食べている。一般にはおじさん向けの料理に映るのだが、ソウルの女性たちは普通に食べている。昔からそうだったように、彼女たちは、見た目が悪い料理にも抵抗感がないらしい。

ホンオフェ(右上)とポッサム(左下)