友人と京橋駅前をハシゴして肌で感じたのは、ソウルの鍾路3街に通じる "酒都" の気配だった。京橋駅前で朝から飲めるのは、戦後の復興期、駅南側を流れる寝屋川の向こうの兵器工場跡地にさまざまな町工場ができ、24時間操業も多かったため、朝から飲む需要があったことの名残なのだそうだ。その歴史背景は赤羽とよく似ている。
ちなみに、兵器工場跡とは、井筒和幸監督・島田紳助主演映画『ガキ帝国』や金守珍監督・山本太郎&リュ・ヒョンギョン主演映画『夜を賭けて』に登場したアパッチたちが鉄くずを盗み出した場所である。
霧雨降る京橋をほっつき歩いて思い出したのは、映画『ブレードランナー』の冒頭に出てきた酸性雨降るどこかの星の繁華街だった。屋台のような店のカウンターで麺をすするハリソン・フォードの背後から取締官が複数の言語で高飛車に声をかける。そのひとつは、どう聞いても「イリワ!(こっち向け!)という韓国語だった。
■鶴橋駅前のコリアンタウンへ
翌日の昼頃、久しぶりに鶴橋のコリアンタウンを歩いた。コロナ禍は韓国ドラマの配信サービスや韓国食材通販ビジネスの追い風になったが、日本のコリアンタウンにも変化をもたらしたようだ。
ソウルの市場のアーケード化が進み、アジアらしい匂いを失いつつあるのと反対に、鶴橋駅東側のコリアンタウンがより濃密な場所に見える。少なくともソウルの仁峴市場(忠武路駅~ホテルPJ前)を格子状にしないと鶴橋には対抗できないだろう。
同時に、4、5年前には見られなかったタイプのおしゃれな韓国料理店が目に見えて増えていた。周りが枯れた感じの店ばかりなので、きらびやかな外観がよけいに目を引く。平日の昼間だというのに、路地は韓流ファンらしき女性たちで賑わっていた。